野いちご源氏物語 二五 蛍(ほたる)
玉葛の姫君は明るく親しみやすいお人柄なの。
男性に対しては警戒して真面目に対応なさるけれど、どうしても愛嬌はこぼれおちる。
そういうところに兵部卿の宮様も魅了されてしまって、熱心にお手紙をお送りになっている。
まだ文通を始めてそれほど経っていないのに、もうご結婚の時期を気にしておられるくらいよ。
お手紙に、
「お部屋の近くに上がらせていただけませんか。私の気持ちの一部だけでもお聞きください」
とあるのを源氏の君はご覧になった。
「この宮様の求婚は見どころがあるだろう。多少は期待をもたせてさしあげた方がよい。お返事もたまにはお書きなさい」
姫君に文面を教えて書かせようとなさるけれど、姫君は、
「気分が悪うございますので」
とお断りになる。
こういうとき、「お返事が遅くなるよりは」と女房が代筆することもあるの。
でも、どの女房でもよいわけではない。
字が上手で、教養のある人がふさわしいわ。
玉葛の姫君のところにはあまりそういう女房がいないのだけれど、「宰相の君」と呼ばれている人が、たまに姫君の代筆をしている。
今回も宰相の君が源氏の君のご指示に従ってお返事を書いた。
源氏の君は、
<兵部卿の宮様がどんなふうに口説かれるのか、こっそりと見てみたい>
とお思いだから、宮様のご訪問を許すというようなことを書くように指示なさったわ。
姫君はというと、兵部卿の宮様にお心が動かないこともない。
宮様に好意をお持ちになったということではなくて、宮様とご結婚すれば、源氏の君の恋心から逃れられるのではと計算していらっしゃるの。
それで宮様からの風流なお手紙に、じっと見入っておられることもある。
男性に対しては警戒して真面目に対応なさるけれど、どうしても愛嬌はこぼれおちる。
そういうところに兵部卿の宮様も魅了されてしまって、熱心にお手紙をお送りになっている。
まだ文通を始めてそれほど経っていないのに、もうご結婚の時期を気にしておられるくらいよ。
お手紙に、
「お部屋の近くに上がらせていただけませんか。私の気持ちの一部だけでもお聞きください」
とあるのを源氏の君はご覧になった。
「この宮様の求婚は見どころがあるだろう。多少は期待をもたせてさしあげた方がよい。お返事もたまにはお書きなさい」
姫君に文面を教えて書かせようとなさるけれど、姫君は、
「気分が悪うございますので」
とお断りになる。
こういうとき、「お返事が遅くなるよりは」と女房が代筆することもあるの。
でも、どの女房でもよいわけではない。
字が上手で、教養のある人がふさわしいわ。
玉葛の姫君のところにはあまりそういう女房がいないのだけれど、「宰相の君」と呼ばれている人が、たまに姫君の代筆をしている。
今回も宰相の君が源氏の君のご指示に従ってお返事を書いた。
源氏の君は、
<兵部卿の宮様がどんなふうに口説かれるのか、こっそりと見てみたい>
とお思いだから、宮様のご訪問を許すというようなことを書くように指示なさったわ。
姫君はというと、兵部卿の宮様にお心が動かないこともない。
宮様に好意をお持ちになったということではなくて、宮様とご結婚すれば、源氏の君の恋心から逃れられるのではと計算していらっしゃるの。
それで宮様からの風流なお手紙に、じっと見入っておられることもある。