五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「市場の女ですよ。」

玄曜は黙していた。

だが否定もしなかった。

「あなた様の側にいる妃たちとは、まるで違います。身分も、教養も、血筋も――すべてが。」

「……分かっている。」

その声には、自制と戸惑いが混じっていた。

分かっていても、心が追いつかない。

それが、陛下という存在でもあることに、陳亮は少なからず失望していた。

「おそらく、あの娘にはすぐに縁談が舞い込むでしょう。それを聞いたとき、陛下はどうなさるのですか?」

玄曜は何も答えなかった。

その沈黙こそが、すでに答えであるかのように――。

「こんなに妃がおられるというのに……なぜ、よりにもよって市場の女に。」

陳亮の呟きは、王宮の風に消えていった。
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