五妃伝 ~玉座に咲く愛~
それが、後宮の掟だった。

玄曜は黙ったまま、杯に手を添えた。

その指先に、わずかに力がこもる。

悠蘭を、たとえ妃として迎えることができても――

それは“後宮の端”にしか過ぎない。

その現実が、胸に刺さるようだった。

だが――

玄曜の胸の奥で、ある思いが日ごとに強くなっていた。

あの少女を、悠蘭を、ただの側妃として迎えるつもりはなかった。

後宮の片隅に追いやられ、名もなき妃の一人として生きるようなことは、どうしても許せなかった。

(四賢妃として迎えなければ……)

そうでなければ、もし子が生まれたとしても、その子には何の権威も与えられない。

彼女を守ることもできず、むしろ後宮の中で標的になる。

その未来が、玄曜の胸を重く締め付けた。
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