五妃伝 ~玉座に咲く愛~
陳亮がふと口を開いた。

玄曜は、伏せていた視線を上げる。

その目に、何かを見透かされたような感覚が走った。

「……あの者の、気持ちを聞いてはどうでしょう。」

「……あの者?」

玄曜が問い返すより早く、傍らにいた楊家当主が反応した。

「ほう、皇帝陛下に、お気に召した娘がおられるとは。」

楊家の目が、わずかに輝く。

思いがけない朗報に、次の政略の布石が頭をよぎったのかもしれない。

「なるほど、どこの家の娘でございますか。貴族の令嬢か、それとも将軍家の姫君か――」

言葉を重ねるごとに、楊家の声は上機嫌になっていく。

だが、玄曜は答えず、黙したままだった。

陳亮の表情がわずかに引き締まる。

(皇帝は、名もなき市井の娘に、本気で心を寄せておられる――)

それは、朝廷にとっても、後宮にとっても、静かなる波紋を生む“禁忌の感情”。

陳亮は、その重さを誰より理解していた。

それでも、あえて進言したのだ。

皇帝の目が真剣だったからこそ。
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