五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「皇帝は、市井の娘を所望と……?」

楊家当主の声が、わずかに震えた。

それは驚きではない。明確な拒絶の色だった。

「馬鹿な話です。そのような娘を妃に迎え、万が一、皇子が生まれたとして――その子に、正統な血筋としての地位など与えられるはずがありません。」

玄曜は、静かに唇をかみしめた。

一瞬の沈黙のあと、低く、だがはっきりと声を返す。

「それは……誰が決める?」

楊家が言葉を飲み込む。

「皇帝である、朕ではないのか?」

その瞬間、室内の空気が張り詰めた。

玄曜の瞳には、一切の迷いがなかった。

楊家は下を向いた。

主君に楯突くことはできない。それが、どれほど非現実的な願いであろうと。

「しかし……皇子として名乗らせるには、それ相応の身分と支えが必要です。」
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