五妃伝 ~玉座に咲く愛~
楊家は言った。

さきほどの拒絶の気配は、すでに影を潜めていた。

「楊……」

陳亮が警告の色をにじませる。

だが、楊家はやんわりと制するように微笑んだ。

「私はただ、陛下のお気持ちがそこまでなら、どのような女性か、この目で確かめたいだけです。」

それは名門の長として、体面を保ちながらの“視察”の名を借りた探り。

――だが、皇帝が本気である以上、楊家もまた動かざるを得なかった。

そして、後宮の均衡が、静かに揺れ始めた。


数日後、玄曜は再び市井に姿を現していた。

今回は、陳亮、そして楊家当主も同行していた。

「……ここだ。」

彼が指差した先に、あの日と同じ、簡素な布が張られた占いの小屋があった。

だが、あの時のような人だかりは、もうなかった。

「誰も……いませんね」

陳亮が周囲を見回す。
< 20 / 82 >

この作品をシェア

pagetop