五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「……いるか?」

玄曜がそっと小屋の前に立つと、中から顔を出したのは――間違いなく、あの少女だった。

「ああ、この前のお方ですね。」

悠蘭はわずかに微笑み、目を細めた。

その笑顔に、玄曜の胸はわずかに熱を帯びた。

自分の顔を、覚えていてくれた――

それだけで、不思議な喜びを感じた。

「……今日は客が少ないな。」

「ええ。占いが“外れた”って噂が広がってしまって。」

悠蘭は、少し困ったように眉を寄せた。

「昨日も、商売がうまくいかなかったって怒鳴られて……」

そう言って、視線を伏せる。

玄曜の心に、鋭い棘が刺さった。

(このままでは、彼女は……)

少女の儚げな姿が、まるで風に揺れる一輪の花のように思えた。

楊家はその様子を黙って見ていたが、口には出さなかった。

ただ、その娘の清らかさと雰囲気に、貴族の血筋ではないと知りながらも、心のどこかで何かを感じていた。

< 21 / 82 >

この作品をシェア

pagetop