五妃伝 ~玉座に咲く愛~
その言葉に、楊家の眉がぴくりと動いた。

だが、あえて怒りを表には出さない。

「名家の坊ちゃん……? いや、この方は……」

と口にしかけたとき、玄曜が静かに右手を上げてそれを制した。

「……愛人ではない。」

静かで、けれどはっきりとした声だった。

「君を“妃”として迎える。正式に、妻として。」

その一言に、悠蘭は視線を戻す。

彼の目を、まっすぐに見つめた。

そこに嘘はなかった。

見知らぬ男のはずなのに、どこか懐かしくて、不思議と心をざわつかせる――そんな目だった。

「……なんで私なんかを?」

かすかに震える声。

「それは……」

玄曜は言葉を飲み込む。

“皇帝だからこそ、今は言えない”――

だが、その沈黙こそが、彼の誠意を証明していた。
< 24 / 82 >

この作品をシェア

pagetop