五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「楊家のご子息だったんですね……」

悠蘭の声は、昨日よりも明らかに言葉づかいが丁寧だった。

「まさか、そんな立派なお家の方と、結婚なんて……」

その言葉には、微かな笑みと共に、どこか距離を取ろうとする気配があった。

だが、次の瞬間。

「やめましょう、私なんか……」

そう言って身を引こうとした悠蘭の腕を、玄曜が静かに掴んだ。

「――朕は、楊家の者ではない。」

思わず振り返った悠蘭と、玄曜の瞳がぶつかる。

「……じゃあ、いったい……」

声にならない疑問が、悠蘭の瞳に宿る。

けれど玄曜は、それには答えなかった。

ただ、彼の掌の温もりだけが、真っ直ぐに彼女の不安を溶かしていくようだった。

「誰でもいい。今はただ……」

静かに、しかし激しく。

「――あなたに心を奪われた、ただの男だ。」
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