五妃伝 ～玉座に咲く愛～

「――でしたら、私があなたの里親となりましょう。」

「え……？」

思わず顔を上げた悠蘭の瞳が揺れる。

「皇帝陛下が、そこまでしてあなたを迎えたいというのなら。我ら名門楊家が、それを後ろ盾とするに値すると判断したまでのこと。」

「そこまでして……私を？」

「ええ。あなたを、後宮に迎えるにふさわしい立場を、私が用意しましょう。」

悠蘭は言葉を失った。

――この場所にいる理由が、“運命”だけでは終わらないものになろうとしていた。


湯殿に満ちる湯気の向こう、静かな灯がゆらゆらと揺れていた。

広々とした湯船に、悠蘭は身を沈めていた。

湯のぬくもりが、緊張していた心と体をゆっくりと解いてゆく。

「……皇帝に相応しい身なりに整えましょう。」

周囲では侍女たちが丁寧に身支度を進めていた。

滑らかな香油で髪を整え、爪の先まで手入れされる。