五妃伝 ~玉座に咲く愛~
後宮の大広間には、華やかな音楽と香の香りが満ちていた。

絢爛な衣装をまとった妃たちと貴族たちが祝いの盃を交わす中、悠蘭はただ静かに座していた。

金盃に注がれた酒を口に運びながら、ひそやかに呟く。

「……まさか、ここまで盛大にされるとは。」

その耳元に、そっと低く親しげな声が届いた。

「どうだ?」

玄曜だった。

賓客たちの視線を避けるように、彼はそっと身を寄せた。

「……何も、こんなに大々的にやらなくても。」

「大々的にしなければ、君は四賢妃にはなれないだろう。」

「四賢妃……?」

悠蘭が小さく問い返すと、玄曜はそのまま彼女の肩に視線を落とした。

「貴妃、徳妃、淑妃、そして賢妃。それが、皇后に次ぐ後宮の四柱だ。君には“賢妃”として、その一角を担ってもらう。」

悠蘭は動きを止めた。
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