五妃伝 ~玉座に咲く愛~
侍女たちの手によって、悠蘭の身なりは整えられていた。

金糸を織り込んだ柔らかな衣に、繊細な髪飾り。

市井で育った彼女にとって、こんな召し物は生まれて初めてだった。

「……まるで別人みたい。」

鏡に映る自分を見つめながら、悠蘭は思わず呟いた。

そのとき、部屋の外から緊張した声が響く。

「皇后陛下のおなりです!」

悠蘭は咄嗟に立ち上がった。

心臓が跳ねるように高鳴る中、扉が開く。

「……ああ、そんなに慌てなくてよいのですよ。」

ゆったりとした歩みで入ってきたのは、一人の気品あふれる女性だった。

透き通るような白い肌に、まっすぐな眼差し。

その存在感に、悠蘭は思わず息をのむ。

「皇后を務めております。楊瑶華です。」

その名を聞いた瞬間、悠蘭の背筋が凍る。
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