五妃伝 ~玉座に咲く愛~
胸の奥が、不思議な感覚で満たされる。懐かしさにも似た、説明のできぬ感情。

「……君は、前に朕と会ったことがあるか?」

思わず出たその言葉に、少女の眉がぴくりと動いた。

「……朕?」

しまった、と玄曜は自分の不用意さを悟った。

すぐに表情を整え、言い直す。

「いや、なんでもない。……何故か、以前に会った気がして。」

少女はほんの少しだけ目を見開いたが、すぐに首を横に振った。

「いいえ。私は、初めてお目にかかります。」

「……そうか。」

玄曜は返された言葉よりも、その声の響きに心を奪われていた。

初対面のはずなのに、まるで魂が彼女を覚えているかのように――。

「……この国の行く末を見たい。」

唐突な依頼に、少女は一瞬まばたきをした。

その若い顔に、困惑の色がにじむ。
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