五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「それは……あまりにも漠然としていて、申し訳ありませんが、見極めるのは難しく思います。」

丁寧ながらも芯のある言葉遣いだった。

その語調に、玄曜はふと高貴な育ちを感じ取った。

「……では、ここ数か月の間に起こることは?」

そう問うと、少女は手を静かに彼の上に差し出した。

「失礼いたします。」

その細い指先が玄曜の手相をなぞり、やがて彼女のまなざしが深く沈んでいった。

一瞬、帳の中の空気が変わった気がした。

「国が……動きます。」

「国が?」

玄曜が前のめりになる。

「皇帝が、新たな妃を迎えます。それが契機となり、後宮には四賢妃が定まります。」

「……四賢妃?」

少女の声は淡々としていたが、その響きは確かだった。

まるで、未来の扉が今、わずかに開いたかのように――。

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