五妃伝 ~玉座に咲く愛~
 そう言いかけた時だった。

玄曜はそっと、玉蓮の手を握った。

その大きく温かな掌に包まれ、玉蓮の言葉が止まる。

「蘇玉蓮――朕の妃になれ。」

静かな言葉だった。

だが、それはまるで玉蓮の胸の奥にまで響き渡る宣言のようだった。

涙がにじんだ。

夢のような、現実とは思えないその言葉。

けれど、目の前の皇帝は真剣に自分を見つめている。

 ――これが、私の想い続けた人の答えなのだ。

あの時のことを思い出して、蘇玉蓮はふっと穏やかに微笑んだ。

あれから幾年かが過ぎた。

妃として迎えられてからの月日は、激しくも静かで、玉蓮にとって確かに幸福な時間だった。

――たとえ正式な皇后ではなくとも、自らの命を懸けて皇帝を救ったことを、あの人は忘れなかった。

誰よりも信頼を寄せられ、度々訪れてくれた夜もある。

決して言葉少なではあったが、玄曜の行動はいつも真っ直ぐだった。

それで玉蓮は満ち足りていたのだ。
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