五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「っ……!」

一気に顔が赤く染まった。

「な、な、なにを……っ!」

紫煙がうろたえると、玄曜は堂々と宣言する。

「だったら――抱いてやるから妃になれ。」

その言葉に、大広間が一瞬静まりかえり……そして、抑えきれぬように周囲の家臣や女官たちが、くすくすと笑い始めた。

「もう少し……他の理由はないのですか?」

紫煙は震える声で問いかけた。頬は赤く、心臓の音が自分にしか聞こえないほど高鳴っている。恥ずかしさと戸惑いと、嬉しさと。

だが――まだ信じられなかった。

「そうだな……」

玄曜は腕を組み、一歩彼女に近づいた。

「君と話していると、心地いい。」

「……っ」

思わず唇を噛む紫煙。目元が潤んでいく。

「他には……?」

まるで、それが最後の希望であるかのように。

玄曜は、ふっと小さく息を吐いた。
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