五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「――朕は、そなたを“同志”だと思っている。」

紫煙の目から、涙がこぼれた。

「同志……?」

「うむ。どんな地位であれ、正面から朕を見てくれる。媚びることなく、誇りを持っている。そんな女に、朕は心を預けたいのだ。」

その瞬間――

「もっと……他に……」

絞り出すような声に応え、玄曜は言葉ではなく、行動で示した。

皆が見守る場で、玄曜は紫煙をそっと引き寄せ、その細い肩を抱きしめた。

「……っ!」

広間の空気が一瞬止まり、家臣たちは気を遣って、視線をそらした。

「そなたを、妃にしたい。」

玄曜の囁きは、どこまでも真っ直ぐだった。

紫煙は、大粒の涙をこぼしながら、震える声で答えた。

「……はい……」

それは一人の少女が、皇帝の妃になると決めた、運命の瞬間だった。
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