五妃伝 ~玉座に咲く愛~

第3部 敵国の姫、妃になる

その日、王宮の大広間には凱旋の空気が漂っていた。

紫煙の父・李将軍が戦に勝利したのだ。

重厚な扉が開かれると、李将軍が凛々しい甲冑姿のまま、堂々と玉座の前に進み出る。

「よくやった!李将軍!」

玄曜は高殿から立ち上がり、その声を響かせた。

「さすがは、わが軍の要。三国一の将軍よ!」

「恐れ入ります。」

李将軍はひざまずき、額を床に近づけると、静かに言葉を続けた。

「そして我が主に、この度の戦の証として――美しき戦利品をお連れ致しました。」

玄曜が眉をひそめる前に、将軍は手を振った。

その合図と共に、奥の扉が音もなく開く。

そこに現れたのは、純白の装束を身に纏い、床に膝をついた一人の若い女。

頭を下げ、姿勢は低いながらも、背筋は折れることなくまっすぐだった。

「名は……?」

玄曜が問う。

「香風(こうふう)と申します。」

答えたのは、李将軍だった。

「ファリヤ国の王妹。敵国より我が手に落ち、和平の証として献上されました。」
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