五妃伝 ~玉座に咲く愛~
玄曜は静かにうなずき、壺の表面を指でなぞった。

「使ってみてもいいか?」

「ええ、すべて皇帝の物でございます。」

李将軍のその一言に、玄曜は微笑みながら、飾り壺を丁寧に戻した。

その時だった。李将軍が、玄曜にだけ聞こえるような低い声で囁いた。

「……あの女も、その一つです。」

玄曜の手が止まる。

「香風のことです。あれも、あなたの物として、遠慮なさらず……ご自由に。」

玄曜は、手にしていた白磁の壺をじっと見つめていた。

透き通るような艶、完璧な形、触れれば壊れてしまいそうな繊細さ――まるで香風のようだ。

「この壺と……香風は、同じ物なのか」

自分の口から漏れた言葉に、玄曜自身が一瞬戸惑った。

李将軍は隣で、あくまで事務的な顔を保っていた。
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