五妃伝 ~玉座に咲く愛~
だからこそ、少女の言葉――「四賢妃が定まる」という予言は、玄曜の胸を強く揺さぶった。

(それが……本当に訪れる未来なのか?)

玄曜は、目の前の少女をまじまじと見つめた。

少女がふと顔を上げ、玄曜の目を真っすぐに見つめた。

その瞬間、胸が強く打ち鳴らされた。

静かな帳の中、周囲の音が遠のいていくような錯覚――

(なんだ……この気持ちは。)

初めての感覚だった。

数多の妃がいる中で、心を奪われたのは、これが初めてだ。

しかも、相手は官位もなければ名門の娘でもない。

ただの、市井の占い師にすぎないはずなのに――

玄曜は、言葉にできない衝動を抑えきれずに口を開いた。

「君の、名前は?」

少女は一瞬ためらい、だが静かに答えた。

「……悠蘭(ゆうらん)です。」

その名を、心に刻むように繰り返す。
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