五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「昔から、占い師をしていたのか?」

「いえ。始めたのは……ついこの前です。」

あまりにも素直な答えに、玄曜は息を飲んだ。

経験もない少女が、なぜあれほど明瞭に未来を語れるのか。

だが、今はそれよりも――彼女の瞳が、言葉より多くを物語っている気がした。

「ありがとう。」

玄曜は椅子から立ち上がると、名残惜しさを押し隠すように背を向けた。

だが、帳の奥から少女の声が追いかけてきた。

「では、また。」

玄曜は、歩みを止めた。

振り返ることはしなかったが、言葉の意味に引っかかりを覚える。

「……また?」

「ええ。あなたは、またこの場所に来ます。」

誰かがそんなことを口にすれば、たいていは薄気味悪く感じるはずだ。

だが――

(不思議だな……)
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