五妃伝 ~玉座に咲く愛~
その知らせを受けたとき、皇后・瑶華は、思わず手にしていた扇を取り落としそうになった。

――敵国の姫が、四賢妃の一人になるというのか。

確かに瑶華は、名門中の名門・楊家の出であり、誰もが認める正統な皇后だ。

だが姫ではない。皇帝に嫁いだのも政略であり、愛ではなかった。

それでも、皇后としての誇りと矜持が、彼女を支えてきた。

遠目に見えた香風の姿――

その瞬間、瑶華は息を飲んだ。まるで絵巻から抜け出たかのような、凛とした美しさ。

――ああ、玄曜様が心を奪われるのも、無理はない。

悔しさと不安が胸に渦巻いた。

その日の午後、思いがけず、香風の方から瑶華の元を訪れた。

「突然お伺いし、申し訳ございません。皇后陛下にご挨拶をと……」

静かに頭を下げる香風に、瑶華は戸惑いながらも、礼を返した。

――この女が、敵国の姫だというのか。こんなにも、気品と覚悟を湛えて……。

瑶華の心は、静かに揺れていた。
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