義姉の身代わりで変態侯爵に嫁ぐはずが囚われました〜助けた人は騎士団長で溺愛してきます〜
ひと通り話し終えると、ポロポロと涙が溢れてくる。

「ご、ごめんなさい……私、私……」


心の内を見透かすような黄金色の瞳にみつめられて、ルーナは、己の境遇を嘆くことしかできなかった。

真っ白な髪に気を取られていたけれど、活力のある瞳の色に初めて気づいたルーナ。

男性も、また、ルーナを慈しむような表情を浮かべ、ガバリと抱きしめていた。


「っ!」

何が起こったのか分からないルーナだったが、ずっと求めていた人の温もりを感じて、押しのけることができないでいた。

よしよしと、優しく背中を撫でてくれる男性。


これは、きっと孫のように思ってくれているのかもしれない。
これ以上、心配をかけてはいけない。
例え、この胸の中に居心地の良さを感じていたとしても。


鍛えられた胸板。逞しい……

やだ、私ったら、この方はおじいさんなのに……。

イエール侯爵様も、こういう方だったらいいのに……。

ルーナは無理矢理に笑顔を作ると、顔を上げる。


「ごめんなさい!泣いてしまったけれど、もう大丈夫です!おじいさんもどうかお元気で!」


何か言いたそうな男性を無理矢理に玄関まで見送ると、ルーナは用意されたドレスに袖を通し、馬車へと乗り込んでいた。

邸に到着して、鎖が外れたのを確認したら、逃げるのよ。

極度の緊張から、心臓が飛び出てしまうのではないかというほどに激しく音を立てている。

大丈夫、私ならできる、大丈夫


自分を落ち着かせるように、暗示をかけて、足首の鎖を確認するためにドレスの裾を少し持ち上げる。

「え?うそ……」


ルーナは驚きのあまりドレスの裾を膝まで巻くし上げていた。

「ない!」


長年ルーナを縛り止めていた鎖が消えているのだ。痛々しい火傷の跡はあるものの、鎖は見当たらない。

お父さまが、こんなに早くに外してくれるなんて……

イエール侯爵様に見られるとまずいとでも思ったのかしら。

もう、いつでも逃げられる。飛び降りる?


一刻も早く逃げないといけないと思っていた所、突如馬車が急停車する。


何?

「中をあらためる!」

「きゃあ!」

「なっ‼︎」

突然馬車の扉を開け騎士が飛び込んでくると、なぜか膝丸出しのルーナの姿を見て言葉に詰まる。

自身のマントでルーナを包むと、抱き上げて、馬車から連れ出した。
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