あの噂に隠された運命に涙する
ドキドキしてくる胸の上で、ぎゅっと拳を握っていると。
スポナビさんは申し訳なさそうに、メッセージを表示させた。

『あと、そろそろ、現実世界に戻った方がよろしいかと』
「えっ? どうして?」

あたしがきょとんとすると、スポナビさんは釘を刺す。

『病院の朝の診察の時間が迫っております。担当の先生と看護婦さんたちが、病室に来られる頃かと』
「ええっ!? もう、そんな時間なの!」

あたしはぎくりとする。
どうやら、この世界と現実世界は同じ時間軸らしい。
つまり、この世界で一時間過ごしたら、現実世界でも一時間経っているということだ。

大変!?
早く、現実世界に戻らないと!!
だけど、どうすれば――。
そこで、重大なことに気づく。

「スポナビさん。突然、あたしたちがいなくなったら、みんな、びっくりするんじゃないかな?」
『芽衣様、ご安心ください。ここで現実世界に戻った場合、こちらでは学校を早退した形になります』

あたふたしていると、スポナビさんは問題ない主旨のメッセージを表示させた。

「そうなんだね。だけど、どうやって、現実世界に戻ったら……?」

思い悩んでいると、今度は現実世界に戻る方法の一覧が表示される。

『きらりと輝く、みんなの願い事を叶える魔法少女、芽衣と叫んで、魔法少女に変身してから、現実世界に戻る』
『歌とゲームをこよなく愛する、スーパーアイドルになってから、現実世界に戻る』
『ログアウトする』

あたしは迷わず、『ログアウトする』に触れた。
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