彼が甘いエールをくれたから
「違うよ。そうじゃなくて……私ひとりが誰かに泣きつくわけにはいかないから……」
「いいじゃないですか。泣きついてくださいよ。もっと頼ってほしいです」

 返答に困って、隣にいる筧くんのほうへ視線をやると、多治見くんの言葉にうなずいてクスクスと笑っていた。

「サブリーダーなんだから、もっと俺たちに仕事を振ってもいいのに。忽那さんは本当に不器用ですよね」
「多治見、生意気」

 胸の内をすべて明かした多治見くんを、最後は筧くんがからかいながら制止した。
 ふたりともアハハと笑い合っていて、醸し出す空気がやわらかい。険悪なムードにならなくてよかった。

「多治見くん、ごめんね。私……気負いすぎてたよね」
「じゃあ、早速仕事を回してください。俺、手伝いますよ」
「ありがとう」

 多治見くんが意気揚々とこちらへ近づいてきたけれど、筧くんが来なくて大丈夫だと片手を上げてジェスチャーをした。

「忽那は俺がフォローする。チームのみんなには、仕事を割り振るメールをあとで送るから」
「俺じゃダメなんですか? 筧さん、もしかして個人的な感情が入ってるんじゃ……。公私混同ですよ?」
「うるさいな。仕事に戻れよ」

 向こうへ行けと言わんばかりに返事をした筧くんを見て、多治見くんはニヤニヤとした笑みを浮かべて去っていった。
 ――個人的な感情?
 そういう言い方をされると、私のことを好きなのかと誤解しそうになるからやめてほしい。
 筧くんだって、からかわれたとわかったならきちんと否定したほうがいいのに……。
< 17 / 24 >

この作品をシェア

pagetop