彼が甘いエールをくれたから
 あの日の筧くんの言葉は、きっと一生忘れられないだろう。

『俺もいるし、みんなもいる。ひとりだけでがんばろうとするなよ』

 気負いすぎてがんじがらめになっていた私の心をほぐし、視野を広げて成長させてくれたのは、間違いなく彼だ。

「知友里さんと筧さん、この一週間でいい感じになってません?」
「え!」
「そんなに驚かなくても」

 加山さんが左手で口元を覆い、こらえながらもクスクスと笑っている。

「でも、お礼はしたいと思ってるんだよね。全部筧くんのおかげだから。お礼……なにがいいかな?」
「じゃあ、食事に誘ってみたらどうですか?」
「……そっか。なるほど」

 男性が好みそうな品物を選ぶのはむずかしいなと考えていたため、加山さんの提案に納得してうなずいた。
 それなら、筧くんの行きたい店や食べたいものを聞けばいい。

「絶対よろこびますよ。フフ」

 加山さんが最後にニヤリとした笑みをこぼした。なにか誤解していそうな気がする。

『忽那には特別やさしいのかも』

 そういえば、あの言葉はどういう意味だったのだろう?
 気にはなっているものの、今は深く考えるなと自分に言い聞かせた。
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