すべての花へそして君へ①
「おとうさん!! おかあさんっ!!」
……夢じゃない。夢じゃないんだ。
わたしのことを、二人が呼んでくれることも。わたしの体を、抱き締めてくれてることも。触れてくれている、大きな手も。細い手も。二人の、あったかいあったかい温もりも。
「……おとうさん。おかあ、さんっ」
引っ切り無しに流れてくる、熱い涙も。……夢じゃ、ないんだっ。
「あおい……っ」
掻き抱くような大きな腕は、あの頃よりも少し、逞しくなったような気がする。胸板も、厚くなった。ちょっと太ったのかな? 声は、昔よりも低くて。それでいて、昔と変わらない温かいやさしさが溢れていて。
「……っ、あおい、よく顔を見せて……?」
頬に伸びてきた細い手は、わたしと一緒だったのか、緊張で震えてた。冷たかった。でも、それでもやっぱりやさしいのは変わりなくて。ころんとかわいい音楽でも奏でているかのような、そんな音色の声も、変わってなくて。
「……おとうさんっ」
あの頃と。二人のやさしさが、全然変わってなくって。それが嬉しくて。それを信じられなかった過去のわたしに、ちょっと腹が立って。
「おかあざんっ」
彼の話を信じてなかったわけじゃない。信じてた。信じてたからこそ、怖かったんだ。
(嘘みたいだ……。ほんと……)
またこうやって、二人に自分の名前を呼んでもらえることも。温かい腕の中にいることも。二人が……二人ともが、ここにいてくれることも。
(嘘、みたいだ……)
あれだけ、過去を振り返るのが怖かった、嫌だった自分が。……もう、いなくなってるなんて。
(うそ……、みたいだ)
昔の記憶が。こんなにも愛で溢れかえってくるなんて。
「あおい」
「あおい……っ」
「うん。……おとうさん。おかあさんっ」
ただ、名前を呼び合うだけなのに。二人が言いたいことも、気持ちも。たくさんたくさん、伝わってくる気がする。
(おとうさんと……。おかあさんだあ……)
こんなにも大きな子どもがいるとは思えないくらい、まだまだ若い二人と。……ようやく。わたしは、再会することができたんだ。