すべての花へそして君へ①
M属性はもちろん父譲りです
「……っ。……っ、……っ。っ、……っ。ぷはー! ていうかね! なんでわたしに相談してくれなかったのかね!!!!」
取り敢えずカエデさんに飲み物でも頼もうと思って連絡したら、何故かビニール袋を提げてご登場。どうやらお使いに行っていたらしく、その流れでここへ寄ってくれたらしい。お忙しいところパシってごめんなさい。
「わたしが言えるような立場じゃないけど、話してくれてたら何か違ったかも知れないでしょ!? 二人ともー!!」
半ばやけくそっぽく言い放つわたしに、二人は目が点になっている。
「いや、それで絶対いい案が浮かぶかって言ったらそりゃどうなるかなんてことわかんないけど。……わかんないんだけど」
二人が悩んでいることを、わたしは全く知らなかった。わたしのせいだと、ずっと思っていたから。別の理由があったなんてこと、知ったのは本当についさっきだ。
「っ。っ。っ。っ、ぷはっ。……だから、もう隠し事しないで! 嘘は、もうつかないで! 取り敢えずわたしが言いたいのはそれ!」
そんなわけで、カエデさんが持って来てくれたグラス(中身はオレンジジュース)を大きく呷り、取り敢えずわたしは、一番初めに言いたかったことを言わせてもらった。
「あ、あの……カエデさん? そんなに注がなくてもいいですよ? 用事があるのでは……」
あと、ものすごくそのビニール袋からいい匂いがするんですけど。さっきから静かに鳴ってるお腹を、オレンジジュースでちょっくら紛らわしてるんですけど。
「いや、いい飲みっぷりだったからよ。なんか注いでやりたくなったんだよ」
「そ、そうですか。でも、流石にこれ以上飲んだらお腹の中ちゃぷんちゃぷんです」
「飲まなきゃいいだろ?」
「冷たいものは冷たいうちに。熱いものは熱いうちにがモットーなので。というか傍に立たれると飲まなきゃいけない気がして……」
「いい子だな、アオイちゃんは」
「へ?」
支離滅裂で突拍子もなかったもんだから、今度はわたしが目を点にする番だ。けれどカエデさんは、本当に柔らかく、包み込むような温かい微笑みを、わたしに向けてくれる。
「……いいなーカエ。あおいと仲良い……」
「俺だったらこんな親、ぶん殴るだけじゃ気が済まねーけどな」
「本当、ごもっともだわ」
「あ。クルミさんはもちろん別ですよ? こいつの場合は、俺が同じ立場だからかマジで許せねえだけなんで」
「いえ、ほんとごもっともですから」
「この恰好じゃなきゃ、ここじゃなきゃ、顔が変形するぐらい殴ってるからな俺は」
「みんなの俺の扱いがだいぶ酷いね……」
「だからアオイちゃん、俺の代わりに後で殴っといてくれ。今まで散々俺にも迷惑かけやがったからなこいつ」
「任されました!」
「あおいっ?!」
「自業自得ね」