すべての花へそして君へ①
全部わかっているとは言えないけど、カエデさんが言いたいことはなんとなくわかる。『男』として『夫』として『父』として、彼は彼なりに言いたいことがごまんとあるんだろう。既にもう言ったあとかも知れないけど。
それでも、それを『ダメなことだ』と、ハッキリ言ってもらえるようなやさしい友人が父にいてくれて、今は心から嬉しく思う。
「……でもねカエデさん」
「ん?」
わたしの両親もあなたぐらい……ううん。あなた以上にやさしい人たちなんだ。
「確かに隠し事はしないでって、嘘はつかないでって。そう言ったけど、わたしはただ、二人に傷付いて欲しくないだけなんです」
「……アオイちゃん」
「嘘も方便って言うでしょう?」
嘘をつくことは、普通はあまりよくないんだけど……でも、人間誰しも隠しておきたいことはあるし、それはもちろんわたしにだってある。
「だから、わたしにしたみたいに、自分が犠牲になって他人を守るような。そんな嘘はもう絶対にやめてねって。そうなるんだったらその前に絶対相談してねって。わたしは、そう言いたいだけなんですよ」
じゃないと、あまりにもやさしすぎるこの人たちは、いつまた自分を犠牲にしてしまうか。もしまたそんなことをしようものなら、絶対に見破ってやると思っているけれど、その前にもう、そんなことはして欲しくないから。
「父も母も、あの時はこうするしかなかったんです。それを今、わたしが責めることなんてできません」
二人はあの時、一生懸命考えて考えて。そしてたくさん傷付いたんだ。嘘をついても、そのやさしい嘘で傷付くなら。わたしは、傷付かない方法を選びたいから。わたしのことを、捨てたのではなく守ってくれてた二人を、今度はわたしが守りたいから。
「だから、ボコボコにするのだけは、勘弁してあげてください」
「あおいいぃ~……」
しがみついてくる父に肘打ちを入れるも、ドMなので全然効かなかった。……流石は親子。
「にしても、カエが執事……ぶっ」
「アオイちゃん。絶対殴っといてくれな」
「承りました」
噴き出した父には、取り敢えず軽く拳骨を食らわしておく。お友達に対して失礼な。とっても似合ってるじゃないか。裏表激しいけど。
「あおいがカエ贔屓するー……」
「残念だったなあカナタ。お前が知らない間に、アオイちゃんはすっかり俺に懐いてる」
「羨ましいっ……!」
「あなた……」