すべての花へそして君へ①
史上最強悪魔は兄貴に転向?
日向はまだ腹が減ってるのか、料理取ってくると席を外した。……気を遣ったのかどうなのか。
「……それで? 日向のいい人アピールは、いい具合にいったのかな?」
「ははっ。ヒナタくんがいい人過ぎることは、よくよく知ってましたけどね?」
いつしか回ってきた連絡網。確かに、あいつは酷い性格してるし、葵ちゃんを泣かせたこともあるけど……まさか彼女の方が、日向にガン無視決め込むとは想定外だった。
まあ、それも理由があったみたいだけど、日向のことだから自分から仕向けたんだろうな。
まだ日向が何をしていたのか、俺らはハッキリと聞いてはいないけど……それでも、あいつはそういう奴だから。きっと、俺の予想は間違ってないと思う。
(俺が隣にいるのになー)
どうやら、いつの間にか彼女は日向にべた惚れしていたようで。彼女の視線は、立ち去っていったあいつの背中を追いかけていた。それがすごく悔しかったけれど、でもやっぱり嬉しい自分もいたから、なんとも言えない気持ちだ。
――本気で好きなら奪ってでも。
そんな言葉が、俺の中に無いわけじゃない。『あわよくば』だって、思ってないわけじゃない。
(本気で、好きだったのにな……)
たとえ、乗り換えが早すぎると言われようとも。俺が彼女を好きな気持ちは本物だった。
(でも、それでもこういう結果になって嬉しいって……)
陽菜に任されたからかな。本当の弟みたいに日向のこと、大事にしてたのかも知れない。本当の兄の翼がどう思ってるのかはわかんねえけど。
「いい具合にいき過ぎちゃったね。ほんとにあいつでいいの? 面倒くさいよ~?」
まあ、これくらいは言ってもいいだろうと。もちろん冗談でそう言ったつもりだった。
「……」
でも、こちらに帰ってきた彼女の表情や視線はどこまでも真っ直ぐで、真剣で。……ちょっとだけ、身構えた。
「確かにヒナタくんは面倒臭いです」
真剣な表情だから、冗談でもそういう風に言ったことを怒られるのかと思った。でも、彼女から出た言葉は寧ろ肯定で、「え」と腑抜けた声が漏れる。
「ほんと、面倒臭いくせに頭の中お花畑とか、困ったもんですよ」
「あ、葵ちゃん……?」
「それに不器用すぎて、相手に伝わりにくい伝わりにくい。……ほんと、先が思いやられますね」
「……そっか」
あいつのことを言葉にする度、彼女の表情には幸せの色が差していく。それが、やっぱり嫌じゃなかった。
(かわいいな、葵ちゃん)
キサの時もそうだったけど。今、目の前の彼女を見て、やっぱり惚れ直した。
今までも、かわいいところなんていっぱいあって。それこそ、俺の腕の中で顔を真っ赤にした時とか最高にかわいかったけど。
(でも、日向が好きで好きでしょうがないって。そんな顔してる葵ちゃんも、俺は好きだな)
まあ、奪わないと決めたわけじゃない。俺はしつこいからね。諦めるなんて、俺言ってないし。