すべての花へそして君へ①
完全に取り越し苦労に終わる
(アカネくん、大丈夫かな……)
やっぱりどこか苦しそうだった。でも『一人になりたい』と。そう言われてたような気がしてならず、わたしはまた逃げるように立ち去ってしまった。
あれ以上は、聞いちゃいけない。何となくだけど、なんでか、そう思った。わたしは……何も、できなかった。
(……言いたいことは言えた。アカネくんからも聞けたんだ。大丈夫。大丈夫だ)
みんなは強い。強くなったんだ。もう、願いを叶える前の時のように、わたしが支えなくても大丈夫だ。十分強く、なったんだから。
(打ってスッキリするなら、二塁打でも三塁打でも打たせてあげたかったな……)
でも、彼はそうしなかった。抱えられるのはつらいけど。でもきっと、それはわたしが手を出していいものじゃないんだろう。……大丈夫だ。大丈夫。みんななら……大丈夫だ。
「さてさて、お次は五番さんだけどー」
そんなことを言っている葵さん。実は日向が選出してるのは、三番までだと思ってます。普通にバッターの数を数えているだけです。なので、彼が悩んでいるのは、取り越し苦労だったりしまーす▼
「おや。こんなところでどうかされたんですう?」
「……あ。カオルくん!」
五番さんを捜しに行こうとすると、カオルくんに遭遇。彼に駆け寄っていくと何故か、いきなり頭を軽く下げられてしまった。
「……いろいろ、つらい目に遭わせてしまって申し訳ありません」
「え? いやいや! カオルくんだって大変だったでしょ? こちらこそ、それに気が付けなくてごめんね?」
「え。……いえ。そう言っていただけるだけで十分です。ありがとうございます」
「うんっ。こちらこそ、大変だったろうに。……助けていただいて、ありがとうございました」
「大変ではありましたが、とっても楽しかったですう」
「そ、そうですか」
でも、そんな言葉とは裏腹に、彼の表情はどこか暗く。ずっと、玄関口の方へと視線を向けていた。
「……コズエ先生はまだ?」
「はいー。そうなんですよお」
寂しそうな彼からは、本当に彼女への想いが見て取れる。こっちまで、ちょっと寂しい気持ちになってしまうほどだ。
「きっともうすぐだよ! だって、今日はパーティーですって言ってるからね!」
「……はい。そうですねえ」
わたしがそう言っても元気にはならない。彼を今元気にしてあげられるのは、たった一人だ。