すべての花へそして君へ①

靴裏には十分ご注意ください


「……どう、大丈夫じゃな」


 ヒナタくんがそう言いかけた時、控えめな通知音とバイブの音が耳に届いた。


「……ねえ。どう大丈夫じゃ」


 またそう言いかけた時、再び同じ音がした。……もしかしたら急ぎの用かも知れない。頭の片隅で、そう思った。


「……ねえ」


 そして三度目。また通知が来た。確実急ぎの用だ。頭の半分くらいはそう思った。


「……はあ。ちょっとごめん」


 彼もそう思ったんだろう。俯いてるわたしは、彼がどんな顔をしているかまではわからなかったけど、大きなため息が降ってきた辺り、とても面倒臭そうだ。


「……言われなくてもわかってるし」


 届いた内容を確認したのだろう。彼からボソッと何かが零れた。ハッキリとは聞こえなかったけど、結構苛ついてるようだ。


「ごめん。邪魔が入った。あとで踏み潰しとく」


 ……な、何をだ。かなり本気っぽいぞ。怖くてそれ以上聞けなかった。


「それで? ……何が大丈夫じゃない? どう大丈夫じゃない?」


 三連続のおかげで、さっきよりは落ち着いたけど……。


「……死にそう」

「……え?」

「死にそう」

「え」


 何度深呼吸したって、静かになってくれやしない。
 とうとう壊れたかな、わたしの心臓さん。だいぶ重労働し過ぎたからね……。


「……えっと。どうしたらい」

「少し、話を聞いてはくれまいか」

「え。あ、ハイ」


 口から出てくる言葉は、冷静。淡々。心の中は、もういろいろ言いたいことがあり過ぎて、それを整理しようと必死。顔は――……。


「申し訳ない。俯いたまま失礼する」

「え……。な、なんで……?」


 40度の熱でもあるんじゃないかと、そう思うくらい。高熱でつらくて、涙が滲んできてしまうくらい。


「今、とても見せられるような顔ではないのだよ」

「……そう。わかった」


 ものすごく、熱い。


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