すべての花へそして君へ①
やっぱり奇跡だったのか……
「へ、へるぷみー……」
温室を出たわたしは、切実に助けを求めていた。
「迷子です。完全に迷子です。ここはどこ~……。わたしはあおい~」
どうやら、ストレートにアイくんのところに辿り着けたのは本当に奇跡だったようです。そもそも頭は記憶力はいいくせに、どうしてこうなってしまうのか。
「……案内看板とか見向きもしないで知らないものに目移りする挙げ句、最終的に『ここはどこ』状態になるわたしがいけないんですけど」
まあ、自分が悪いってことは重々理解しています。そうは言ってもしょうがないんだよね。
わたしの場合、知らないことって知識としてはあんまりないから、知らないことを見つけるとついつい好奇心が働いて働いて……。時々恐怖心もあったりするけど、まあ前者が勝つわな。
それで結局気が済むまで~とかになるから。……そりゃもうキリがないよね。
「どうしよう。さっきの、会場の建物を見つけられたら、取り敢えずはわからないにしても全部の扉を開けたらいいから……」
『何かしら目から入っていた記憶の情報を辿っていけばいい』という結論には、辿り着けないんです。ちょっとおバカちゃんなので▼
「ど、どうしたものか。だ、誰かに会えないかな……」
そんな迷子の迷子のわたしはというと、ただいま庭園を出て、車がいっぱい停めてあるところに来ています。恐らく駐車場だと思うんだけど……なしてまたこんなところに。
こんなところ、誰もいないだろうなと思いながらうろうろしていたらなんと! 見知った人影を発見! しかも今一番頼りになる!!
わたしは、一目散にその人の下へと駆け寄っていった。
「がえでざ~んっ!!!!」
「――!?!?」
カエデさんはビクッッ!!!! っとものすごく大きく肩を震わせて、奇怪なものを見るような目をして驚いていた。
まあ、そんな変な声を出しながら駆け寄ってこられたら、誰だってビックリするでしょうけどね。……人間だよね、わたしちゃんと。
でも驚いたのは、こんなところで煙草を吸っていたせいも……もしかしたらあるのかも知れない。
「あ、アオイちゃんか。驚かせんなよ……」
「……がえでざん」
「ど、どうしたっていうんだよ。……ちょ、ちょっとあっち行こう。ベンチあっから」
カエデさんは、駐車場の隅に置いてあるベンチまで誘導してくれた。
別段泣いてたりとかはしてないんだけど、こんな広い敷地内で偶然にも知り合いに会えて、わたしはとても感動した。
「アオイちゃん。迷子か……」
「はいっ。ぞうなんです。よがっだ~。もう一生この敷地内で野垂れ死ぬかと」
「いや、流石に防犯カメラあるから。大丈夫だから。見つけてやるから。っていうかスマホ持ってねーのか? 連絡してくれたら迎えに行くぐらいしてやったのに」
「いえ。流石にそこまで迷惑は掛けられません」
「防犯カメラ使って捜すようになる前に言えよ、頼むから」
「……ずみまぜんっ」
でも、たくさん歩いたので少しは把握したはずだ。……そのせいで、もう既に日は跨いでいますけどね。