すべての花へそして君へ①

 彼は目を見開いた。それにただ、やさしく笑いかける。


「何も悪くないんですもんね。それもちゃんとわかってくださって、ありがとうカエデさん」

「……ま。そうだよな。アオイちゃんなら気付く、よな」


 何も言わなかった。ただただ、ふわりと笑うだけ。


「今度、きちんと奥様とお話しさせてください。カエデさんにも改めて言いたかった。言えてよかった。……わたしのせいで、ごめんなさい。どうか責めないでください、あなた自身のこと。わたしが言うのはおかしいですが、それでも責めるのをやめないのならどうか、わたしを責めてください」


 ぎゅっと握る手に力を込める。わたしの真っ直ぐな視線に言葉に、カエデさんは大きく息を吐いた。


「はあ……。んなことしねーよ。ただ……まあ、今夜だけは許してくれ」


 許すも何もない。ただ、今夜までだとしても、自分自身を責めては欲しくなかった。
 けど、……彼が決めたことなら。わたしはそれに頷くだけだ。


「……わかりました。改めて、本当にありがとうございます。カエデさ――」


 言い切る前に、温かい腕の中にすっぽりと収まっていた。


「よく頑張った。アオイちゃん。本当に……おかえり」

「……っ、……はいっ!」


 どうして気が付かなかったんだろう。あったかい人だとは思っていたけれど。


(ははっ。カエデさんはやっぱり、お父さんだっ)


 腕の中は、お父さんの匂いがした。


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