すべての花へそして君へ①
君のやさしさにはくすぐりを
「今は返事中、かな?」
彼女の頬の熱が俺の手の平に移り終わる頃、ゆっくり腰を上げたらポキって骨が鳴った。それがおかしかったけど、隣の彼女は驚いてた。もちろん、俺の骨が鳴ったから驚いてるわけじゃない。
「……しんどいね。俺が言うのもなんだけど」
「……かなでくん」
「俺は、アオイちゃんが気遣ってくれたから、傷は浅いと思うよ。アオイちゃんよりは」
やさしい彼女は、きっと、丁寧に返事をしてるんだろう。相手のことを。……相手のことだけを、考えたものを。
(俺は君にもう、線を引かれちゃったからね)
ただ、彼女のことだから、そういうのは彼に吐き出せないんじゃないかなって思った。だから、ちょっと助けになったらいいって、思ったんだ。
「みんなに言い終わったら、絶対にヒナくんのところに行ってね」
「え? ど、どうして?」
「ヒナくんにたっぷり甘やかしてもらうといいよ。俺ができないのはちょっと残念だけどー」
目をパチパチしたあと、彼女は小さく笑い出した。
「やっぱりカナデくんはやさしいっ。ほんと、……やさしいね」
今は、その笑顔が少しキツかった。だって、彼の名前が出たから。理由はわかってても、やっぱり悔しいなー。
「あのね、聞いてくれますか。カナデくん」
「え? な、何を?」
でも、彼女はどうやら何か話したいことがあるみたいだ。どうせ彼のことなんだろう。顔が楽しそうに笑ってるから。
「あのね、今日中にみんなへお返事をしないと、わたしお仕置きされちゃうんだよ!」
「え? きょ、今日中?」
「正確に言えば、昨日だね! だからもう、お仕置きは決定なの。まだまだいてくれるので」
「そ、それはそれは……」
こんな風になっている彼女にお仕置きとか。俺はそんなことできな――
(……え)
いいや、そうか。彼は、見越してた……のか。
「ねー。もう、こうなったら報告に行くまいかな? って思っちゃうよー」
嬉しそうな彼女は、彼の意図してることがわかってるのかな? それは俺にはさっぱりだけど……。
(……ほんと、素直じゃないんだから)
ま。それは前々から思ってたけど。
彼女を泣かしたこと、俺はまだ怒ってる。好きだからって、酷い言い方はしちゃダメだ。
(これからも、そんなことするようなら……)
俺がまた、教えてあげないといけないな。