すべての花へそして君へ①

不器用さんも相変わらず健在

<そして、あのあとすぐのお話>



「うぎやぁあああー!!!!」
(※ただ『おかえり』と言われただけ)


 にもかかわらず飛び上がった葵さん、何故か叫び声を上げながら花畑を駆けて行ってしまいました。
 残されたみんなはと言うと、声の大きさと驚きと、突風を吹き付けてくるほどの逃亡に目が点になっています。


「ね、ねえ日向……。あっちゃんに今、一体何が起こったんだ……?」


 代表して紀紗が日向に尋ねます。それはそうでしょう。わけがわかりませんからね。
 さあ日向さん! 開始早々申し訳ありませんが、アンサープリーズ!


「あー……。多分だけど、みんなに許してもらった実感が湧かなくて、まだちょっと怖いんだと思う」

「なんじゃそりゃ」


 みんなして盛大なため息をつきました。呆れたかと思いきやそれはどうやら若干名のようで。


「ここは婚約者の俺が、あおいさんを抱き締めて安心させてあげないと!」

「いや、元婚約者の俺が葵にキスして宥めてやらないと」

「いやいや! ここはエロから純粋に転換したこの俺が――ぐはっ!!!!  ……なんでヒナくん俺には容赦ないの……」


 さすがに自分より強い人たちに手は出せなかったのか。はたまた圭撫だから手が出せたのか。


「だってカナだし」


 どうやら後者の理由で鳩尾にパンチを食らった圭撫さん。開始早々体を張っていらっしゃるようです。


「かなくん!  あおいちゃんの愛を奪い取るのはその障害を越えないと!」

「障害が大きすぎるよお~……」


 柚子はツンツンと、けちょんけちょんにされた圭撫を突いて遊んでいます。
 取り敢えずは安堵の息を漏らそうと、息を軽く吸った日向。ですが残念なことに。


「よお~しみんな! あおいチャンを探しに行くぞお~!!!!」

「えっ。ちょ、アカネがそんなこと言ったら止められない――」


 アカネの言葉を合図に、みんなして薄暗くなってしまった花畑へと、逃亡者を探しに駆けて行ってしまいましたとさ。


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