すべての花へそして君へ①
「……はあ」
止めようと思って少し手を浮かしましたが……日向さん。早々に諦めて大きなため息を零しました。
こうなったらみんな止まりませんからね。相変わらず、頭の回転は速くていらっしゃるようです。
「若いって、いいよね……」
「そうですよね……」
「いや、シントさんもトーマもまだ若いって」
駆け出していったみんなを眺めながら零す年上組。日向の言う通り、あなた方はまだ若いですから。
「そうだぞ~。ここにお前らよりも歳食ってるヤツがいるんだからそんなこと言うなよ~」
「あ。朝倉先生、いたんですか」
「ああ。いたの菊」
「キク、タバコ臭いから寄ってこないで」
「はじめっから酷い言われようだな……。へえへえ。オレは先に帰っとくからな。後は頼んだぞ~」
本当に面倒臭いのか、菊はさっさと帰って行ってしまいました。まあ彼の場合、居ても居なくても問題無いので放っておきましょう。
「杜真くん。俺らも行こっか」
「そうですね。取り敢えず、葵ちゃんにキスしてきたいので」
「は?」
「そうだね。俺もしてこようかな。 俺だけ口にちゅーできてないし」
「え。俺だって人工呼吸だし。カウントしないでくださいよ」
「……え。ちょっ、人工呼吸とか初めて聞いた――」
「よし! 行こう杜真くん! まだ葵の想いが揺れてる時に!」
「そうですね! 葵ちゃんを食べたいと思います!!!! 日向よりも先に!」
日向の声が聞かない振りをしているのか。はたまた日向の話を全然聞いていないのか。それとも二人の世界に入ってしまったのか。
結局のところ普通にその話をしてしまって、不味いとでも思ったんでしょう。二人も駆け出してしまいました。恐らく日向ではなく、今頃葵に心の中で謝っているんじゃないかと思います。
そんなこととは露知らず。一人だけ取り残された日向はというと……。
「……え。揺れてんの」
葵のことに関してはとことん臆病だったりするもので。そんなことを信人にポロッと言われてしまっただけで、不安で不安でしょうがないご様子。
「いや、揺れてねえよ流石に。……え。揺れてないよね」
「揺れてないよ?」
「おわっ!?」
そんなことをボソボソ言っていた日向さん。後ろからひょっこり問題の逃亡者葵が肩に顎を乗せてきたので、変な声を出して驚いてしまいましたとさ。葵のドッキリ大成功。
<めでたしめでたし>