すべての花へそして君へ①
「なのでっ。改めて言わせてくださいっ。しんとさんっ。わた、わたしと。お。おともだちに。ひっく。なってくださ――……っ!!!!」
もう我慢なんてできなかった。上から降ってくるたくさんの涙ごと、葵を思い切り抱き締めた。
「家族でいいじゃん。だめなの?」
「……ひっく」
「なんで泣くの。……泣くなら言うなよ」
「……。いい。いい」
「え?」
「ぅぅっ。ず。ずっと。言いたくて」
「……あおい」
「でも。言えなくて。執事なんかにしてっ。ごめんなさい……っ」
「……。ばか」
俺は、なれて幸せだったっていうのに。寧ろ、友達よりも近いじゃん。
(……でも、だからきっと一線は越えられなかったんだ)
なんだかんだでそういうこと気にしてたから、持って行かれたのかなって思うけど。まあ、彼がどうなのかなんて知らないけどね。
(きっと、俺が言えないようなことも言ってたんだろうな……)
俺は、たとえ助かるとしても、葵にとってキツい方法なんて選べないだろうし。……あーあ。支えてきたつもりだけど、完敗だな。
「友達はやだ」
「えっ」
腕に抱き締める彼女が、ビクッと震える。……大丈夫。そういう意味で言ったんじゃないよ。
「親友……いや、大親友にしてよ。それか親戚。義兄。あとは、不倫相手? 浮気相手? いいね。響きがとってもいい」
「……し。しんと」
スルッと、それからリボンを解く。ほんと、こんなのいつどうやって用意したのか。
「ねえ、よく巻けたね。最初何かと思ったし。チ〇ルチョコにリボン巻くとか、器用すぎでしょ」
そう言いながら、どちらの手首に巻くんだったかと記憶を手繰り寄せる。
(……あ。そういえばさっき、巻いてくれた時……)
そっと。細い柔腕を持ち上げて。そこへやさしく結んであげる。
「なるに決まってるでしょ? そんなの、俺だって葵との関係断ち切りたくないに決まってるじゃん」
「……うぅぅっ」
そうか。だからさっき橙を巻いた時は何も言わなかったのか。今度こそ、ちゃんと正しい意味で使えるから。【友達として、大好きだ】と。