すべての花へそして君へ①
大概あなたもしつこいわねえ
無事に用意された部屋へと帰ってきたけれど。多分、シントが用意させたんだと思います。恐らく一番いい部屋です。何せ天蓋付きベッドだし。ふかふかで、すぐに眠りに落ちてしまいそうなほどやわらかかった。机やソファーもあり、先程行ったシントの部屋の大きさぐらいはあるかも知れない。
そんなことを思ったけれど、やっぱり眠る気になどなれなかった。月明かりが差し込む窓際に椅子を運んで、そこへと腰掛け外を見上げる。
「……これから、か」
考えていたものはざっくりだ。それはもう、考えていなかったと言っていいくらいのもの。
未来が変わった。先のことを考えられるようになった。……いいや。考えないといけなくなったと言った方が正しいかも知れない。
「いっぱいあり過ぎて、……迷っちゃうね」
前のことを思ったら、信じられないことだった。今はすごく、生きていることを実感する。
「……どうすれば。いいのかな」
わからなかった。どうすればいいのか。それが少し、怖かった。
人は、どうやって未来を考えるだろう。人は、どうやって生きる道筋を立てるのだろう。
今までは、立てられた道を歩くだけだった。ただひたすら、暗闇へと続く道を。だから今、それを自分がどうやって立てたらいいのか、わからなかった。
「……はは。このままだったら完全に白紙だろうなあ」
楽しみにしていると言った、彼に渡す一枚の紙に。わたしはちゃんと、道を書き示すことができるだろうか。
「……泣い、ちゃった」
それと、もうひとつ。
「……わたしは。やさしくなんて、ないよ」
本当にやさしかったら、きちんとした返事を彼らに伝えているだろう。……それを自分は。曖昧にしたんだ。
つらかった。彼らの、歪んでしまう顔を見る度。必死で堪えた。泣く資格なんて、ないんだから。
「守ったのはっ。自分だ」
それを見て、傷付くのが嫌だったんだ。だから、言葉にしなかった。できなかった。自分が、……嫌だったからなんだ。
「やさしいのはみんなだ。わたしの想いをわかってくれて。きちんとした答えを求めないでいてくれて。……ほんと。さいっていだっ」
あれだけ、どさくさに紛れてシントの腕で泣いたというのに。まだまだ出てきそうだった。……報告になんて。行けるものかっ。
「アウトを取ってくる? そんなの。みんながわざと振ってくれたからじゃん。わたしは。どうしてこんなに弱いんだ……っ」
でも、それでもちゃんと、ありったけの感謝を込めて、できる限りの返事はしてきた。あれが、返事とは呼べない曖昧なものだということはわかってる。それでも……。嫌だったんだ。
わかってる。選んだのは自分だ。それに後悔などない。でも。嫌だったんだ。大好きなみんなを……。わたしが。苦しめることがっ。
「……泣かせてしまったっ」
大好きだからこそ、笑っていて欲しいのに。わたしはやっぱり、苦しめることしか。できない。
「ダメだっ。ダメダメ。こんなんでどうする。言われたでしょ。理事長に。しっかりしなきゃ」
泣くのなんて間違ってる。そんなの、……ただの自己中だ。