すべての花へそして君へ①

『――ぶはっ!!!!』


 とか一人でパニックになっていたら、いきなり耳元で大笑いされた。


『ははっ。いや、オレは別にそれでもいいけどさっ。……ははっ』


 あ。今すごい笑ってる。……それが見られないのがとっても残念。


『ははっ。あー笑った。……いやね、ちょっと話したいことがあるんだ。そんなに時間はかからないんだけど、大丈夫かなと思って。ていうか今どこ? 部屋で合ってる?』


 ……なんだろう。ほっとしてるくせに、ちょっと残念とか。


(……っ!? ざ、残念ってなんだっ!)

『え。お~い。まだ変な妄想してるの?』

「もっ、もうしてないよっ!!」

『……へえ。ていうことは、さっきまではしてたんだ』

「!?!?!?」

『(あー。今絶対かわいいのに)』


 またもやパニック。でも、落ち着いてさっきの彼の話を頭で整理する。


「は、話したい、こと?」

『うん、そう。忙しそうなら出かける前でもいいんだけど』

「ううん。大丈夫だよ。今部屋……だけど、わたしがそっちに行こうか?」

『そっちって? オレの部屋来るの? 積極的だね』

「……!? だっ、だからそういうことじゃなくって!」

『はは。ごめんごめん。ちょっと会ってないだけで、声聞けて嬉しくってさ』


 ……え。


『こっち来るって、すぐ迷子になるくせに。大丈夫。部屋の場所はカエデさんに聞いてるから。今からそっち行くね』


『すぐ行くから、待ってて』そっと耳から離したスマホの画面には、〈通話終了〉という文字に、詰めに詰めまくった2分にも満たないデレタイム。


「……え」


 だ、誰ですか。え? ひ、人違い?


「いやいやいや。そんなわけないでしょ」


 え。ちょ、ちょっと待ってよ。今からずっとこんな感じなんですか?


「~~っ。し、心臓保ちませんってばよ……っ」


 なに。声聞けて嬉しいとか。それ聞いて、どれだけ心臓痛くなったか知らないっしょ。


「……死にます。近々朝日向葵は、きゅんってなって死にます。よろしくうぅぅ……」


 そして、バタリとベッドの上に倒れ込んだら、ノックの音がした。え。本当にすぐだしと思ってビックリ。
 パチンッと顔と心に気合いを入れて立ち上がり、大きく綺麗な扉を開けたそこにいたのは――――


「……え。あ、あなたは……」


 彼だけではなかった。


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