すべての花へそして君へ①
「コンテストの時、絡まれててこれ見てないって聞いたから」
「ついでに言うと、メインの手品も見てませんっ!」
「……酷ーい」
「見たかったけどアイくんファンに囲まれちゃって……」
これからは、今まで彼が撮ってきた写真とか、覚えた手品とか、いろいろ見せてもらいたいな! というか、全部見せてもらいたいっ!
「……って、あおいのことだから絶対犬の方に行くと思った」
「え? ……違うの?」
「うん違う。ついでに言うと、空耳じゃない」
ん~? 何のことだろ~。言ってることが全然わかんないんだけどなー。
「さらに言うと、オレは超本気」
あは。あははは。一体何のことやらー……。
往生際の悪いわたしに、ヒナタくんは画面を顔にめちゃくちゃ近づけてきた▼
「残り時間は……あと約5時間ってところかな」
ホーム画面に大きく表示されていたのは、もちろんただ今の時刻。
「これ。過ぎちゃったら……どうしようか」
「――!?」
慌ててもう一度、わたしは画面を見た▼
時刻は……もうすぐ19時になるぅうー!?
「こんなところでゆっくり歩いてていいのかな。あおいちゃん?」
さっきまでとは、違う意味で心臓がうるさくなる。
「制限時間内に終えて、きちんと報告に来ること。それができなかったら……お仕置き、ね?」
「お仕置きだけはお許しをぉおおおー!!!!」
――カプッと首に噛みつかれたのを合図に、完全に恐怖に怯えたわたしは、彼の体が宙に浮くくらいの猛スピードで皇へと駆けて行ったのだった。