すべての花へそして君へ①

限界とか邪魔とか私情とか。


『実感湧いた? 叫び声を上げてたあんたをみんな捜しに行ったんだよ』


 目覚めてすぐ、駆けて行った彼女。みんながいなくなった頃合いに戻ってきた彼女へ、そう言葉をかける。
 自分が説明したところで、実際に会い、そして言葉を交わさないと、彼女が実感することなどないことくらいわかっていた。

【おかえり】

 けれどきっと、その言葉ひとつでみんなの思いも確実に届いただろう。……ただ、頭がいいくせにこいつはバカだから。


(頭ではわかってても。やっぱりすぐには無理か)


 案の定、ツンと後ろに引かれる感覚。その弱々しい力で、まだこいつの中に不安があることがわかった。


(全て話した。今オレが、できることは……)


 彼女の不安を解消することは、もう今のオレにはできない。できるのは――……オレじゃない。


(こんなオレが、できるのは)


 そっと手を取って。ぎゅっとその手を握って。


『掴むんなら、こっち』


 ぶっきらぼうな言葉で。微かに震える手を引いて。少しでも多く、少しでも早く、少しでも長く。彼女の不安を、和らいであげることだけだ。


(こんなオレの手で、そんなことができるとは思わないけど……)


 それでも、無いよりはマシだと。そう言い聞かせた本音は、これ以上のことができなかっただけ。
 そうだったらいいなと、願望がちらつく。そんなわけないのにと、現実が頭を過ぎる。そして。


(……やば)


 好きで好きでたまらなかった彼女と想いが通じ合った今、こうして手を繋いでいるという事実に。少なからずオレも、緊張した。
 けれど、オレの手汗にも彼女は『嫌じゃない』と言ってくれた。……それだけで、十分。今のオレは、彼女のそれだけで結構浮かれる。ほんと、どうしようもない。


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