すべての花へそして君へ①
(慣れないっ……!)
取り敢えずその時は、ものすごい動揺しながらもお礼は言えた。言えたけど……。
(こっ、こういうのを、『女の子扱い』というのだろうか……)
いや、言うんだろうけど。もちろんそれにも動揺してるんだけど! 悪魔さんが、ご主人様が、あのドSが! ……こんなことをさらっとしてのけていることに、わたしはとっても驚いています。
「……?」
そもそも女の子扱いとか、されるよりする側だし。かわいい女の子大好きだし。
「……」
『大切な人を守れるように』……そうやってわたしは強くなった。
守られること自体、慣れてない。守る側だったし。それが今、守られる側になって……。
(どう、すればいいのかな……)
こんな関係になった今。わたしはヒナタくんと、どう接していけばいいのかな。
「……あのさ」
「……! はっ、はい!!!!」
いろいろ悩んでいると、斜め上から声が降ってくる。驚きのあまり思った以上に大きな声が出てしまい、ちょうど横を通りかかった人に『元気だね』って、クスクス笑われてしまった。
「……あ、あはは……」
普段なら。まあまず、こんな外でへまはやらさかなかったからわかんないけど、多分『よく言われるんです』とか。笑顔で返せたであろう。
「そうなんですよ。こいつ、それだけが取り柄なんで」
でもヒナタくんの前で、ほんのちょっとへまをすることが……は、恥ずかしい。そんでもって、なんかちょっと怖い。
「……。ねえ、やっぱり今日やめにしない?」
「え? ……だっ、ダメに決まってるでしょ!」
「えー……」
「いや、あの。ヒナタくんが悪いわけじゃないからね……?」
彼がいきなりそう話題を振ってきたのは、ついさっきのことについてだ。『家の前が大変なことになっているから』『皆さんの荷物がもう皇にあるから』そんな理由で、道明寺から皇へ。パーティー会場が変更になったんだけど……。
それをわたしたちが知ったのは、ヒナタくんが自分のスマホを見たからだ。
『……うげ』
その時の彼の第一声。一体どうしたのかなと思ったら、理由は簡単だった。
《まさか、寝てるんじゃないだろうな》
《まさかイチャついてるってことないよね?》
《そのままホテルに連れ込んでるんじゃ――》
的なことがいつものメンバーから100通以上来ていたからだ。アイコンのコマンドには『99+』って出ていたらしいけど、数えることはしなかったみたい。
ちなみにわたしの方にも連絡は来ていた。その場所が変更になったことと、ヒナタくんの方とちょっと似たようなこと。大体50通くらいだったけど……逆に女子二人だけでこの数ってすごいよね。結局ヒナタくんの方の数が、どうだったのかはわからないけど。
『……マジですか』
そして、そのあとしばらくして出た『しまった』と言いたげな第二声。ショートメールが届いていたよう。送り主は、わたしの父である。
『道明寺へ行ったら報道陣に囲まれて、そことどういう関係なのかとか、コメントを求められたらしい。 しかもクルミさん連れてたから、そっち関係の奴らも付き纏ってきたって……』
ヒナタくんは、画面を見ながらそう教えてくれたけれど。……言い方はだいぶ変えたみたいだ。文句という文句がズラズラと並んでいたらしい。
『……今日、やめよっか』
『ダメに決まってるでしょ』