サヨナラじゃない
やっと落ち着いたとき、慎重な感じで雨坂ちゃんが口を開いた。
「と、ところで2人は何を買おうとしてたの…?」
「雑貨屋さんから出てきたから何か買おうとしてたのかなって」そう口をもごもごと動かしながら話す雨坂ちゃん。
実は雨坂ちゃん、勘がいいのでは…?多分、偶に発動するタイプなんだろうけど。
「え…っと、日記帳をね」
「なんでです?」
当たり障りの無い普通の会話だ。でも、内心言い訳がでなくて酷く焦っている。
や、やばいやばい。どうすれば…。
今日何度目かのアラレへの助けの視線を送る。
だが、もうそれさえ分かっていたかのように此方に見向きもせずに説明を始めていた。
「千影"ちゃん"が転校日記を書きたいっていって、ね?」
「う、うん。そうよ」
クール系の話し方をしながら、泣きつくように心の中でアラレに「ありがとぉ!」と礼を言う。
不審に思われるかも知れないとまたまた思っていたが、「そうなんだぁ…!」と、花が咲くような笑顔を見せた雨坂ちゃんに、騙されやすい娘で心配だと思う反面、そんな娘を騙してしまったという罪悪感に苛まれる。
すると、「そうなんだぁ!じゃあメメ的にはこの日記帳ぎおすすめだなぁ♡」という、ハートが付属してある甘ったるい猫撫で声が聞こえた。
その声にゾッとしながら振り返ると、雨坂ちゃんに劣るけど、まあまあ可愛い方のお姉さんが立っていた。
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