すべての花へそして君へ②
 ――――――…………
 ――――……


「というわけで! 今日は完徹だ~!!」

「ああぁ……。肌が荒れる……」

(……あ、あれ?)


 誘導作戦、どうやら失敗▼
 え。あれ? ど、どうしてだ。わたしの計画は完璧だったはず……。


『えー。あおいちゃんまでそんなこと言うー』

『だって、明日海水浴だし、潜ってる最中に寝不足で寝ちゃったら大変でしょ?』

『そりゃ大変だけど、さすがにそこまで神経図太くないと思うわ』

『やだやだー! 絶対恋バナするんだからー! あたしもかなくんの惚気言うんだからー!』

『まあ、それは聞きたい気もするけどね』

『まあ、それには同意するわ』

『でしょでしょ! みんなでお互いの昔話とかもしようよ~』

『……昔か』

『……あっちゃん』

『あ。や、やっぱりまだしんどい? あたしったら無神経なことを……』

『え? ううんっ! なにか面白いネタがあるかな? と思ってただけ』

『あっちゃんは存在が面白いから大丈夫だと思うよ』

『そうだね』

『どういう意味かな』

『そのまんまだね』


 ……あ、そうそう。あまり強く押しすぎたら逆に怪しまれると思って、押さずにいたらそのまま流されちゃったんだった。全然誘導してないじゃないかわたしよ。


(……でも、しょうがないよね)


 抜け出せなかったんです。努力はしたよ……? ごめんなさ~い。素直に行こう。よし、そうしよ――


《キサとユズが寝てる横で
 必死に声押し殺すのか

 それとも――――》


 おっとー。ヤバいぞ? ピンチだぞ?
 ……いや。待て。よく考えよう。まず、徹夜をするのであれば、二人は寝てないから、ここの文章は誤りだ。そうなったら、まず彼が部屋を訪れることはできないだろう。


(……!!)


 そしたら、声を押し殺す必要もないじゃないか……!


「そうだ! それにしよう!!」

「「え?」」

「完徹しよ! ね? 完徹しよ! そうしよ! ね?!」

「……急にあおいちゃんがやる気になった」

「何があったんだろうね……」


 万事解決! これに決定!!


「敵前逃亡も、時には必要な戦略である」

「「??」」


 彼にはとっても申し訳ないけれど、一応連絡を入れておいて。今度とびっきり美味しいご飯、何か作ってあげよっと!
〈今日は、女の子たちと思い出作りに励みます〉ってことで。そうさせてもらいましょうっ。……明日はどうなるかわかんないけど。


(……うむ。きっと納得していただけるであろう。 すまぬ。ご主人殿)


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