すべての花へそして君へ②

 やっと肩の力が抜けたので、ふーっとしっかり浸かることができた。
 ……あ。そういえば、二人ってこれからのことって決めてるのかな?


「え?」

「これから?」

「そうそう~」


 温かいお風呂で、溶けてなくなりそうなほど気持ちよくなりながら、彼女たちにも聞いてみた。


「これからかー……」

「キサちゃんはキク先生と結婚するんでしょ?」

「え」

「そっか! 来年だっけ?」

「いやいやちょっと待ってよ。あたしだっていろいろ考えてるんだって」

「「そうなの?」」

「おい。どういう意味だコラ」


 話を聞くところによると、女王様にはやりたいことがあるみたい。


「そりゃもちろん、このまま家庭に入って……っていうのもありだと思うけど、社会人として、きちんとキクちゃんの隣に立てるような人間になりたいの」

「「先生よりは十分しっかりしてると思う」」

「真面目な顔で返さないで」


 ――専門学校に行きたいの。ネイル関係の、仕事に就きたいから。
 まずは社会人として二、三年はちゃんと働いて、今後のためにお金も貯めて……と。本当にいろいろ考えていらっしゃった。


「すごいね! いつかお店開くの?」

「……もし、キクちゃんがさすがに仕事態度云々で桜を辞めさせられたとして」

「「え」」

「もしそれで、路頭に迷っちゃうことがあったら」

「「……」」

「……あたしだって、助けられてばっかじゃ嫌だから」


 彼女の知らないところで、彼が彼女に助けられたことは、きっと多いと思う。その逆ももちろん。
 けれどそうやって、お互いがお互いを助け合えるような。そんな関係は……いいなあ。


「柚子は?」

「かなくんのお嫁さん!」

「即答だね!」

「というのは、ほとんど冗談」

「「え」」


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