すべての花へそして君へ②

人の価値観は違うもの


『あのね? ちょっとだけお願い……というか、行きたいところがあるんだ』


 事前にそのことを話していたわたしは、旅館に荷物を置き次第、軽装で再び電車に揺られていた。


「アキラくん、一緒に来てくれてありがとう。でもよかったの? 観光する時間無くなっちゃうけど……」

「それは葵もだろう?」

「それはそうだけど……でも、わたしはなんて言うか」

「俺はよく会ってたし。一応生徒会長だし、みんなの代表」

「え。生徒会長関係なくない?」

「ま。きちんと“本人”に会って話したいことがあるってことだ」

「そっか。きっと喜ぶと思うよ。……ところでその飴何個目」

「……七個目です。もうやめます……」


 ちらり。アキラくんの鞄を覗いてみると、飴を包んでいた紙だらけ。さすがにそれはストップをかける。


「もうすぐ着くよ」

「あ。うん。ヒナタくんもありがとう」

「え。オレにまで? オレは普通に仲良かったから会いに行くだけだよ」

「……ふ~ん。そーなんだー」

「え。何その反応。……あ。もしかして妬いてる?」

「アイくんもカオルくんもレンくんも、一緒に来てくれてありがとね?」

「ううん。俺らの場合はなんだかんだで接点多かったし、きっとあおいさんよりもよく会ってたんじゃないかなって思うよ」

「え。……おーい」

「そっかそっか! じゃあお友達だったのかな?」

「いえ。それはさすがに。 あなたが完全にスルーしていらっしゃる方を交えて話をするまで、ぼくたちは嫌がられてましたからあ」

「そうだよ。なんで無視するの」

「そっかー。でもちゃんと和解できてよかった。レンくん大変だったんじゃない?」

「え、ええ。まあ……そうですね。オムライスの作り方教えてはくれましたが、教え方があまりにも酷すぎでしたし、ドレスの採寸をするのに薄着になってくれと頼んでも、イヤイヤと断られ――」

「レンこいつの下着姿見たの? オレまだ上しか見られてな――」

「着いたよ降りよー!!」


 変なことを言い出しそうになった彼の口を、慌てて塞いで席を立つ。
 危ねえ危ねえ。君ってば何をいきなり言い出す――


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