すべての花へそして君へ②
「んん!?」
そんなことを思いながら立った途端、手の平に生温かい感触が。
慌てて退けて悪さしやがった奴の方を睨むように見る。当の本人は、何事もなかったかのように紙袋を腕に引っかけ、パーカーのポケットに手を突っ込んだまま。視線に気付けば、したり顔でべーっと舌を出してきた。
「葵? どうしたんだ? 早く降りてこい」
「あおいさーん! ドア閉まっちゃうよ!」
すでに電車から降りているみんなから声がかかったので、大慌てで電車から降りる。……取り敢えず。
「ていうかさ、みんなオレには言ってくれないんだね」
「お前になんか言う価値もない」
「え。……レン。まだ海に沈めって言ったこと引き摺ってるの? うわ~。ちっこい奴だね」
「ほんとですねえ~」
「そんなことを言ってくる悪魔よりはマシだ」
そんなことを駄弁りながら改札の出口へと歩いて向かうみんなから遅れていると、アキラくんとアイくんが心配そうにこちらを振り向いてくれる。
「……葵? どうしたんだ?」
「あおいさん?」
それに続いて、カオルくんやレンくんまで何があったのかと振り向いてくる。そして、最後の人がゆったりとこちらを楽しそうに見てきて……。
「……!!」
――っ、限界!
「おっ、お手洗い行ってきます!!」
「「「「え?? 」」」」
「……ぶはっ」
✿
いきなり駆け出してしまったあおいさんが、きちんと【W.C.】と書かれた看板の方へ向かっていくのを見て安心しつつも、残されたオレらは目をパチパチしていた。……まあ、一人を除いてだが。
「さっきのあおいさん、素直に妬いたって言ってくれればよかったね~、九条くうん?」
「ソーダネー」
「まあ、言わなくてももう十分わかるので、あれはあれでよかったのではあ?」
「ソーダネー」
「素直じゃない葵も可愛い」
「わかりますっ!! さすが皇さん!」
「ソーダネー」
そんな盛り上がっている人たちから九条を引っ張り出す。……おい。お前、あおいさんに何したんだ。