すべての花へそして君へ②
愛しさと期待と隠し事
旅館へと帰ってきたわたしたちは、食事が用意してある別室へと足を運んだ。そこには、それはもうキラキラと眩しいくらいの御馳走が並んでいて、口に運ぶたびほっぺたが落ちてしまいそうだった。
「うわ。ヤバいね。ウマ」
ご飯は本当に美味しかった。それに、美味しそうに食べてるヒナタくんを見るのは好きだし。それだけで幸せだし。
「……どうかした?」
「どうもしないことはない」
「ん? ……あ、わかった。このあとのことが気になって気になってしょうがないんでしょ」
実は部屋に帰ってきてから、ちょっとした遣り取りをして今に至る。その遣り取りというのが――――
『お風呂にする? ご飯にする?』
……ってヤツ。特に意図はない。ただプールで体も冷えちゃったし、お腹も空いてるけどお風呂が先の方がいいかな? って、そう思ったんだ。だから聞いたんだけど……。
『あおいにする』
即答だったからね。選択しにもはや無いからね。彼に言われてようやく自分が口にした言葉を理解したけどもう遅く、野獣と化した彼に食べられそうになったところで。
ぐう~ぎゅるるるぅ~……。
まあ誰の何の音かは敢えて言わないけど。結構いい雰囲気だったのに余儀なく中断。空気読めよって睨まれました。
そんなこんなで、戦をする前の腹拵えっというやつで。ご飯を食べてたんです。本当に、ご飯全部美味しいんです。
「うん。気になる……」
「あれ。えらく素直だね。てっきり照れながら否定してくると思ったけど」
だから余計気になるんですって。だって……だって、宿題の解答がわかってしまったから。……たぶん。
自分のお腹を見た▼
ついでに撫でた▼
ため息をついた▼
「パンツの上にお肉乗ってる……」
「んんっ!? ご、ごほっ、ごほっ」
しばらくヒナタくんの咳は止まらず。そして食欲も止まらず。目の前の欲望に勝てなかったわたしは、咳き込む彼は放っておいて、欲望の赴くまま鱈腹料理を平らげてしまった。
満足満足。完全にわたしの食欲は満たされ、お腹もパンパンに満たされたのだった。……あーあ。