すべての花へそして君へ②
「ごめんねみんな! 遅くなっちゃった」
「あ。あおいさーん! やっと帰ってき、た……あれ?」
帰ってきたわたしを見て、なぜかみんな、目をパチパチ。ど、どうしたっていうんだ。一体何が……あ。もしかして。
「ど、どうしたんだ、葵……」
「ちょ、ちょっとトイレの蛇口が壊れちゃってね?」
というのは大嘘だけど、まるで土砂降りにでも遭ったかのように(※それぐらいの勢いで顔を洗いました)髪の毛の先からぽたぽたと垂れる水滴。これが原因だ。それにみんなは目ん玉が落ちそうなまでに目を見開いている。
いや~、さすがにハンドドライヤーに頭突っ込むわけにはいかなかったからねー。これでも一応ハンカチである程度は拭いたんだぞ? ……頑張ったんです、これでも。
「……はあ。力の加減わからなくていろんなところ破壊してたら、そのうち世界が終わるよ?」
「お、終わらないよっ!?」
ため息をつきながら、持っていたのであろうタオルで、ヒナタくんが髪を拭いてくれる。
「それで? こんなになるまで手を洗ってきたんですか」
「え? 別に手を洗いに行ったわけじゃないよ?」
「え。じゃあ何しに行ったの」
「……お、女の子にはいろいろあるのっ!」
わしゃわしゃされながらそう答えたけど、『こんなことであっさりヒナタくんが引き下がってくれるわけないよなー……』と思いながら上目遣い。
でも、見上げた先のヒナタくんはとっても真剣な表情で。「女の子にはいろいろと……」ってぶつぶつ言ってた。おお。珍しいことに、どうやらそれで納得してくれたらしい。
「……まあ、これだけ日が照ってたらすぐ乾くと思うけど。タオルで拭いただけだから、一応気を付けておいてね」
「は~い!」
「タオル持ってていいから」って言われたのでお言葉に甘えることに。それを首に巻いて、水色のリボンが付いた麦わら帽子を被り、準備万端!
裾のところに花の刺繍がついた白いワンピースを翻し、わたしたちは“彼女”が眠る場所の海へと向かった。
「それじゃあ行こう!」
モミジさんに会いに。
――――――…………
――――……
『モミジさん。まだ見つかってないんですか』
『ええ。捜索は続けているんだけれど……』
わたしは、度々会っている公安のコズエ先生に、彼女の捜索の進み具合についても話を聞いていた。
『今日もごめんなさいね。あの件のことで、いろんなことの証言が必要で。……一度で済んだら良かったんだけど』
『いえいえ。大丈夫です。わたしの言葉が役に立つのなら、何度だって来ますよ』
『……そう言ってもらえて助かるわ。 実は、アイくんの方はあなたよりももっと来てもらっているんだけれどね』
『そう、……なんですね』